写額漆 28 sei 制作談
ご縁があって、いつもの器とは違った制作をさせていただいた。
「額装」とはいえ器であることは同じだと解釈している。
額は写真を収めるための器。
具体的に中に収めるものがあって、包み込む器を考える。
平面の写真を「もの」とするにはどうするか。
写真から得たインスピレーションから制作に入る。
途中で何度か高木さんに確認していただき、
額装の専門的な細部の見え方のところをモリヤさんに頼る。
制作の途中段階を幾度もsessionすることで、新たな発見や方向が変わっていく。
Jam sessionのようで、流れるように細部が作り上げられる。
バンド活動の様なので、パパラギバンドと名付け活動した。
ボーカル高木さんをのせるためのリズムを刻む。
スタジオの質感・光沢・エッジ・素材。
目指していたのは高木さんの家の庭つくりを参考にした。
老木の桜の木を中心に、石と黒土の枯山水。
手を加えているのに自然と調和して、行くたびに変化する。
自然物に一つ手を加えたら、もう不自然なものになってしまう。
高木さんの庭づくりのように、不自然に見えないような額を作れないだろうか。
自分の中では、写真が『自然』
「額」は、その自然を生き生きとさせ、愛おしいものへと変えていくための庭づくりと捉え
手を加える。
地塗り、研ぎを重ねながら、エッジ、質感、光沢、色、厚み、
不自然になる作業を加えながら、違和感を感じるところを直していく。
写真という「自然」に対して、自分はどれだけ違和感に気づくことができ、
それを直していくことができるかなと。
写真を生き生きと、愛おしいものにできるかなと。
高木さんは既成概念に捉われず、美しいもの、好きなものに正直に反応する。
既成概念がない、うつくしいものへ向かうための感覚。
自分は漆工ができる人だったら誰でも知っていて、誰でもできる工程の一部を
切り取って、そこに当てはめる。
「食器の使用に耐える」という制約がないところで制作をする。
メンバーがフォローしてくれるからこそできた自由演技。
とても勉強させていただき、楽しい時間を過ごした。
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