ごはんのおいしい漆の器

展示に向けて準備を進めていく時間がとても好きだ。


展示する空間を考えて、出かけてくれる人を想像して、

目線の動きや、高さのバランス、配置、色、イメージが湧くようにするにはどうしたらいいだろう。

ワクワクするにはどうすればいいだろう。

展示で見栄えするものと、家に置いて馴染んでくれるものは少し違う。

でも、「なんかこれいいかもっ」て、触覚で感じられるものを作れるか。

見栄えしないものでもワクワクを伝えるにはどうすればいいか。

 その器があることで、少しだけでも楽しくなったり、なにか周りを掃除して綺麗にしなくては。と思えたり、気持ちがシャンとしたり、ごはんが美味しくなったりするにはどうすればいいだろうと。

いつもたくさん話している。


考え、感じて準備をして、

作ったものに囲まれながら展示期間中は見つめ直す。

ヘンテコな考えのものと、威張っているものと、落ち着いたものと、可愛いものと、

尖りすぎと、格好付けすぎのものがたくさん見えてきて、それぞれおもしろい。

まだ自分は不十分だなあと次の目標が見えてくる。


自分にとっての展示は、

漆を通じて人と話をしたり、

作る料理で共感したり、子供の成長と器の関係について話したり、

おいしいものの話で盛り上がったり。

自分の家に人を招いてご飯を食べる時と同じように、

その時の気候や、空腹状況や、体調を思って、

美味しく楽しめるご飯を準備すること。

玄関からどこまでその人を思うことができるか。

美味しくお茶を入れたいし、その時間を楽しんでもらうために準備したい。

と同じなのだ。

それにできるだけ力を注ぎたい。

展示をさせていただいているどの場所でも変わりない。


それ以外のことに注意を払わなくてはいけない状況で、

気張らなければワクワクを伝えられない。僕には難しいと感じてしまった。

踏ん張るときは踏ん張って、今は力を蓄える。

時期が来たら、また力を注ぎたい。

批判しない。批判する時間があるくらいなら、その分良くする方に視線を向ける。


宮下智吉