曲物その3 仕上げ〜完成編

曲物勉強

接着した後の、合口の仕上げから。

曲面に合わせた豆鉋を使い、内側から、合口の厚みを削っていきます。

豆鉋の刃の幅は、広い方が綺麗な面に整いますが、

外側から少し押すようにしながら、内側を削るのですが、力加減が掴めず、

思うように刃がかかリません。

仕方なく幅が狭いもので行うことにしました。

それでも難しい。


この時に、合口部分以外を削らないように気をつけます。

薄くなると、そこに力が集中して歪む原因になります。


内側の鉋かけが終えたら、外側の合口を鉋かけします。

最終的には、

合口(接着部分)の段差を削り、全体の厚みと同じ厚みになるように整えます。


曲げを仕上げたら底板を貼ります。

底板の材料は、曲げた側面と同じ「アスナロ」を使います。

底板の厚みは3厘ほどでしょう。

あまり薄すぎても、反る原因となるようです。


型をなぞり、底板を木取りします。

※ 底板の木取りは、「木表」が器の外側になるように。

「木裏」を外側にすると、木が反った時に底が丸になってしまい、

ごろつき(輪島弁)ます。


糸鋸で、広めに削ってから鉋をかけます。

この時も極端に言うと、

外側(木表側)の輪郭の方が広くなるように、

木裏にかけてほんのわずかだけテーパーをつけます。

木が痩せた時、木が動いた時を考えて、

少しだけテーパーをかけることで曲げ輪の歪みを抑えられます。


※底板の内側になる面の小口を、鉋で一層面取りをします。

面取りをしてあると、スムーズにはめ込むことが出来ます。

※底板を接着する前には、側面の底板と接着する側の小口に鉋をかけて、

平面を出します。


底板の入れ方は、おおよそ3方法あります。

「いれぞこ」「あげぞこ」「しゃくりぞこ」?

ちょっと呼び名を忘れてしまいましたが、

一般的に一番多い方法は、「いれぞこ」で、

曲げた側面の内側の径を型取り、はめ込む方法です。


接着は「麦漆」を使います。

ここでは「米糊、漆、刻苧粉(欅木粉)」を混ぜたもので、

接着と同時に、面取りをした箇所の隙間も埋めることができます。


1.底板の小口面に麦漆をヘラで配る。

2.ガラス板などの平面の上に底板を置き、上から曲げ側面を押しはめ込む。

3.内側から底板を押し、接着面が浮いていないかを確かめる。

4.麦漆のハミ出しを、ヘラですくい取る。

5.もう一度ガラス面に押し当てて、接着面が浮いていないかを確かめる。

6.乾燥させる。


乾燥したら、高さを決め、面取りを行い、木地は完成です。


総括

今まで自分が制作してきた器の木地加工の方法は、

「轆轤挽物」や「刳り物」、たまに「指物」の加工方法でしたが、

「曲物」の木の特性を生かした制作方法を実際に体験してみて、

衝撃に近い感動を覚えています。

「曲物」の持つ、軽やかさ、木取りの歩留まりの良さ、柾木目が通った清潔感ある佇まい。

作業工程の気持ちよさは、漆を初めて扱った時の感激と似ています。

「轆轤挽物」や「刳り物」で、木地加工するときはほぼ広葉樹を使っていますが、

針葉樹を使った器に清潔感を感じるのは、なんとなく神事を連想させるから、

日本人にとっての精神性ともつながっているのかもしれません。


「曲物」に向いた丸太からの材料選びから、異なる木の癖を読んだ木取り方法。

乾燥度合い。木地加工の細部の技術。

どれを取っても数度の体験だけで、一筋縄に行くはずはありません。

工程にはおこせない、細部の技術というか、その土地と気候状況も含めた経験。

それが体に染み込んでいるのが、師匠なのだと感じます。

職人さんはやはりすごいですよ。


これから、まずは自分なりの伝え方を考え、

今回学んできたことを継続して試し、苦戦してみたいと思います。

材料ありきの木地制作なので、アスナロの材料で曲物を作る方法は、

能登で行うのが一番自然だと感じます。

今後もまた能登に滞在し、曲物を学び続けたい気持ちです。

土地と人。

土地の持つ力と、そこで生きる人の優しさと気概にも魅了されているんです。


まだまだ知らないことがたくさんあって嬉しい。


宮下智吉