試験的漆教室 木地作り編 その2
試験的漆教室を行なっています。
デザイナーは受講生の方々。木地師として宮下。
似非木地師宮下にいかに自分のイメージを伝えられることができるかが、大事な要素です。
こういった人の考えたかたちを作ることは、
自分は仕事とすると楽しくできないので、受けることはありませんが、
方法を変えると楽しくできるものですね。
まずは、皆さんのラフイメージを、図面に起こしてみます。
図面に起こしましたが、それが全てではないので、
ラフのイメージを大事に形に起こしていきます。
「何を食べたいか」「誰が使うか」「どこでどういう場面で使うか」
が寸法よりも大事ですね。
さて、木地制作に入ります。
木地制作に入る前に、轆轤に必要な道具の紹介をします。
縦木、横木に成形するのに、挽き方を変えていますが、
縦木の場合は、「山中式」の木地挽き方法を取っています。
轆轤に対して、左横から挽く方法です。
作業の位置を移動しない方法で、それに合わせた道具が考えられています。
「山中式」の方法は、産業で量産するのに発展した、効率が良い方法だと思います。
ハメ木
荒木地を固定するのに必要で、良いハメ木がないと始まりません。
外側挽き用・内側挽き用・横木用・縦木用
寸法の微々たる差と、深さの差で用意してあります。
芯もちケヤキ/葛/カエデなど、粘りがあり、狂いがなく、割れていな材を選びます。
丸鉋(内側挽き)・刳り
ハイスピード鋼を使用しています。
曲げる角度、大きさ、の微妙さで使い勝手が異なるので、用途に合わせて成形します。
横木を削る時と、縦木の内側を削るときに使います。
販売はしていないものなので、鋼材から鍛造します。
左右両刃にして使います。
「刳り」(深く削るための刃物)の場合は片刃にします。
裏挽き・角取り
縦木の外側の成形をするときに使います。
刃先を曲げる角度によって使い勝手が異なります。
研ぎ方によって、切れ方と、力のかかり方、体への負担が異なるので、
繊細な刃物です。
キサゲ(スクレーパー)
仕上げに用いる道具です。
かつては鍛造されたキサゲ用の刃物もありましたが、
現在はハイスピード鋼の、金鋸の刃から加工して作ります。
馬(鉋台)
手前が横挽き用、奥が縦挽き用です。
鉋を構える台として使います。
横挽き用は、轆轤に対して正面から挽きます。
成形する木地の幅に合わせて、鉋の置く位置を変えます。角度が急でないと対応できません。
縦挽き用は、轆轤に対して左側から挽きます。
幅広さに関係なく、鉋の置く位置はほぼ変わりません。
山中木地師の師匠の型から写したかたちです。
木槌・ハンマー
柄は仕込みます。
柄は「ウシコロシ」という材で、堅く、弾力が有ります。
調べたところ、別名ウシコロシで、鎌柄(かまつか)というバラ科の広葉樹です。
鎌の柄に使うから「かまつか」と呼ばれるようになったんでしょうね。
筬定規
器の型を測る定規です。
定規といっても数値を測るのではなく、断面のラインをなぞるものです。
金属製の既製品はありますが、器に傷をつけることがあるので、
織で使う「竹筬」を用いて、彫金の友人に作ってもらったものです。
何でもこなす漆の師匠の道具を写したものです。
佇まいがいい。
あと、ケヒキとか、トンボとか、
轆轤用に使用する道具は、まだいろいろありますが、
どの道具も、職人自ら加工して作ることを前提に発展してきた技術かもしれません。
産業があって、熟練された職人さんがいて、それに憧れる後継者がいて、
時代とともに発展し、伝承されてきたものです。
職人になるには、道具作りから始まって、
加工技術の経験を積み、5年とか、10年とかかかると言われます。
徐々に道具を揃えられて、自分の癖に合わせて道具を整えながら。
どの道具が自分の方法の理にかなっているかが、なんとなく分かり始める。
道具が整えられるようになると、自然に技術が身に付いている。
職人さんが一人前になれるための時間は、
身の回りの道具が、一通りのことをできるように整えられるまでの時間なのかもしれません。
道具も材料も、産業としてないと、自分たち作家は容易に準備することもできない。
産業、職人、作家それぞれの役割があるのだと思いますので、
自分以外の役割を尊重し、自分の役割を探していきたいと思います。
さて、次から成形に入ります。。。続く
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